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OVERKILL(オーバーキル)~世界が変わろうと巻き込まれ体質は変わらない~
OVERKILL(オーバーキル)~世界が変わろうと巻き込まれ体質は変わらない~
Penulis: KAZUDONA

第一章 00  Prologue・今と始まりの物語①

Penulis: KAZUDONA
last update Terakhir Diperbarui: 2025-12-02 18:11:12

「あれ?」

 転移で降り立った場所は目的の街からまだ数㎞以上離れた草原。どういうことだ?

「おい、カーズ、なんかえらく離れた場所じゃないか?」

 不思議そうな顔をして俺、カーズに尋ねてきたこいつはエリック。この世界ニルヴァーナで最初に仲良くなった冒険者の友人だ。

「変だな……」

「何が? 転移に失敗したの?」

 俺にそう訊いて来たハーフエルフの女性はユズリハ。エリックとは幼馴染で腐れ縁の冒険者だ。

「いや……、何かの干渉を受けたみたいだ。俺はギルド前に転移したはずなのに……」

 無理矢理転移先を捻じ曲げられた様な、奇妙な感覚が残っている。どう考えても他者の介入があった。魔力の波長を変えられた様な感じだ。

「そのようですね……。それにもうそこまで来ているようです。姿を見せなさい!」

 女神アリアが離れた空間に向けて叫ぶと、その虚空に黒いひずみが広がる。まるで異次元倉庫ストレージを開いたときの様な光景だ。なるほど…、あんな風に亜空間の中を移動しているのか……。

 この女神アリアから血と神格を受け継いだ俺は、彼女とは弟のような関係になっている。

「ククク……、さすがは腐っても神。よく気付いたものだ」

「テメーか、ナギストリア……。何の用だ?」

 傷は癒えているが、やはり封印術の影響で大幅に力は落ちているな……。コイツは俺の過去の数千年に及ぶ心の中に存在し続けていた闇の部分の様な存在だ。

「アレが、過去のカーズ?! ……確かに前の姿に似てなくもない、かもだけど……」

 彼女、アヤは以前の俺を知っている。でもあんなに陰険な見た目じゃなかったけどな。

「過去のお姿も素敵ですが……。禍々しすぎますね、あのオーラは……。やっぱり今の美女の様な美しいお姿の方が、わたくしは素敵だと思います!」

 俺が新名を与えたエルフのディードが口を開く。しかしこいつは何を言ってるんだろうか? そして俺の見た目には触れないで欲しい。

 ヤツが既に背から抜いている黒い大剣も元通りに修復されているし、漆黒の甲冑も同様だ。どうせあの三神のやったことだろう。

「力の大半を大神に奪われたのだ。それを補うため、貴様の神格を奪いに来てやったのだ。カーズ、俺の半身よ。他の奴らに用などない」

 コイツ……、マジで舐めてるんだな……。天界での俺は儀式で弱っていた。実力など全く発揮できなかったとはいえ、そこまで舐め腐ってわざわざ出て来るとは。だがこれはいいチャンスだ。コイツ一人にこんな芸当が出来る訳がない、手引きした連中が必ず何処か近くにいるはずだ。

「テメー、舐めてんじゃねえぞ!!」

「一人で来るとはいい度胸ね。アンタ達の下らないお遊びに付き合わされたお礼をしてやるわ!」

 エリックにユズリハはすぐに火が付くな……。だが危険だ。

「待て二人共、アイツは神気を操れる。悪いがこれは神格を持っていないお前達じゃどうしようもないんだ。アリア、みんなを神気結界で守ってくれ、こいつは俺がやる」

「そいつは、凄く嫌な感じがするの……。カーズ、気を付けて……」

 心配そうにアヤが伝えて来た。

「ああ、大丈夫だから。アリアの後ろにいてくれ。アリア、任せたからな!」

「危険です! 一人でいくなんて!」

「そろそろ弟を信じろよなー、まあ見てろって」

「はあ、仕方ないですね……、言い出したら聞きませんし……。多重神気結界!!! これで此方は大丈夫です。気を付けていくのですよ!」

 強靭な結界を幾重にも展開したアリアに手を振ってから、ナギストリアへと歩み寄る。

「俺の……、みんなが託してくれた大切な神格を奪う……? それで失った力を取り戻そうってか? ふざけるなよ、相当舐めてるんだな……!」

神眼しんがん明鏡止水めいきょうしすい未来視プリディクト・アイズが発動します。神格解放により全能力が大幅にアップします>

 心の奥底に眠る神格を解放、爆発させ、燃え上がった神気を全力で放つ。それと同時に体に装着される、銀に真紅のデザインが施された天上の神々が纏う神力の輝く鎧、神衣カムイ

「アレが、神衣ってやつか…? とんでもない力を感じるぜ……」

「カーズ様が負けるなど、ありえません!」

 エリックとディードの声が聞こえる。ああ、絶対に負けねえよ。

「フッ、天界での貴様は儀式の影響でお荷物だったな。今なら全力を出せると言いたいようだが、後悔するがいい!」

「いつまでもあの時のままだと思うな。俺はお前をぶった斬るのに最早何の躊躇もない。来い、神剣ニルヴァーナ!」

 目の前に顕現される、輝く銀と真紅のオーラを纏う俺だけの神器。やはり凄まじい力を感じる。そしてその炎と冷気のリングに覆われた黄金の柄を左手でガシッと強く掴む。実戦では初めて使うというのに、これまでずっと使って来たかのように手に馴染む。さすがだよ、鍛冶の神ファーヌス。アンタの最高傑作、ありがたく使わせてもらうぜ!

「神器を手にしたところで貴様に何ができる、まずはこいつを受けろ! ギガンティック・テラーズ・フラップ強大なる恐怖の羽撃き!!!」

 ゴオオオゥッ!

 天界で放った技か。奴を中心に黒い神気の衝撃波が放たれて来る。

「アストラリア流ソードスキル、クリムゾン・エッジ!」

 ズヴァアン!!!

 超高熱の刃で、目の前に迫り来るヤツが放った衝撃波を縦に地面ごと斬り裂き、破壊する!

「何ィ!? ギガンティック・テラーズ・フラップ強大なる恐怖の羽撃きの衝撃の一点を衝いて破壊するだと?!!」

「それはもう見たんだよ。全方位に地上と地下から神気を走らせ、その衝撃で上へと吹き飛ばす。多人数相手の不意打ちには有効だが、たった一人に放つには無駄が大き過ぎる。目の前の薄い衝撃波のみを破壊すれば事足りる。ならこちらから行かせてもらうぜ、あの時の借りをキッチリ返してやらあ! アストラリア流ソードスキル!」

 ヤツに向け、加速スキルの光瞬歩こうしゅんぽで一気に距離を詰める!

「アストラリア流など通用せんと言ったはずだ!!」

 ズガガガシュッ!!! バキィン!!!

フェンリル・ファング神狼の牙4クアトロスラッシュ」

「ぐっ、何だ今の、は…!?」

 上下からの神狼の牙、同時二連撃を二発、4連斬。既存の二連撃しか防げなかったヤツの左の肩鎧を砕き、肉体に斬撃が入った。鮮血が飛び散り、ナギストリアが片膝を着く。

「お前は既存の基本技を知っているだけに過ぎん。何もわかっちゃいない。俺も以前はそうだったけどな。アリアが生み出した、神の流派がそんなに浅い訳がないだろうが。それにお前が知っていると勘違いしているのは俺が放ったことがある技のみ。俺は大剣スキルを使っていない。見て知っているのは|シューティング・スターズ《流星群》くらいだ。さあ、まだまだ続くぜ!!」

「くっ、小癪なっ!!」

 ドッ!! ズドドドドドシュッ!!!

「|ストーム・スラスト《嵐の突き》・6セイスショット」

「うぐっ、…がっ…!」

 嵐の様な突きの6連打。数発は防御されたが、ヤツの甲冑を突き破り肉体へと刺突が突き刺さる! だが、まだこんなもんじゃ終わらないぜ!!

 ズザンッ!!!! バキィイイイーン!!!

「ぐ、がはっ…、何だ…!? 今の連撃は……?」

ヘイロー・クロス神の後光の十字斬り8オクトスラッシュ。8方向からの斬撃だ。防ぎようがないだろ?」

 こいつは俺のクソ親父の神刀技しんとうぎ八岐大蛇ヤマタノオロチと原理は同じだ、光の魔力を纏わせた十字斬りを8連で放っただけ。上下左右に肩からの袈裟斬りに斬り上げ、角度と斬撃数を変えるだけでまるで別の技の様に進化する。これこそがアストラリア流の神髄とも言える。神器の前にヤツの神気の鎧装がいそうなど紙切れに等しい、そして今の斬撃で黒曜石の様な甲冑も大きく破壊した。

「く…っ、いつの間にこんな力を……?!」

 斬撃で体中は傷だらけ。鎧もまるで意味をなさない。それにヤツの大剣ではこの連撃スピードには対応出来はしない。

「テメーらが下らないことをやってる間に、こちとら神の試練に大魔強襲スタンピードと闘い続きの日々だったんだよ。テメーのこれまでの過去が憎悪がどうとかなんざどうでもよくなる程な! いくぜニルヴァーナ、刀フォーム」

 ピキィイイン!!!

 白く輝く鞘に、溜息が出るような美しい真紅の刀身が納められている刀へと変化した、俺の神器。手に取り前傾、利き手の左手を前に構え、抜刀術の体勢を取る。チキッ、右手の親指で剣の鍔を少しだけ持ち上げる。

「どうした? 抵抗しろよ、このままだと一方的だぜ」

「ぐ、おのれ……!」

「アストラリア流抜刀術」

 ズドドドドドンッ!!!

 ヤツの体へと次々に突き刺さるような衝撃波が叩き込まれる!

「がふっ……!?」

飛天ひてんだん、十連」

 放った斬撃を更に神気と魔力で変化させ、銃の弾丸の様に相手に撃ち込む。俺のオリジナルだ。骨が砕けるほどの衝撃を撃ち込んだ。だがこいつはしぶとい、天界で目にしているからな。

「くそっ、ならば喰らえ! 黒の衝撃を!! ダーク・インパルス!!」

 ドゴオオッ! パアーンッ!!!

 ヤツの右掌から放たれた闇属性の衝撃・魔力撃を聖属性の魔力と神気を込めた左掌で叩き落す!

「な、あっ……?!」

「一度見たと言ったはずだ。対策してないとでも思ってるのか? 厨二野郎が。力が衰えているとはいえ、今迄の攻防でもう理解できた。お前は本来普通の人間。あの時は圧倒的な負の力でどうにかなっていたからわからなかったが……。お前と俺とじゃ戦闘経験の差が圧倒的に違うということがな。俺が神の試練でどんだけの数の魔物と闘ってきたと思ってるんだ? 神格が欲しいなら奪ってみせろよ。テメーはいつまでも過去の悲劇の主人公気取りのままなだけなんだよ!」

「ぐおおお!! おのれええええ!!!」

 怒りに任せ暗黒剣で斬りかかって来る。だが上からの斬撃か、体勢から見え見えだ。

 ガイィィーン!!

 右手の鞘に納刀したニルヴァーナで受ける。

「バカめ! 刀を抜かずに防ぐとはな!」

「バカはテメーだよ、アストラリア流格闘スキル・奥義!」

 ドゴオオオオオオオオオオオオオオンンッ!!!!

 残った左手拳で、がら空きの胴体に風穴を空ける程の強烈なパワーを込めたアッパーカットで天高く撃ち上げる!!

「アルティメット・ヘヴン!」

「ぐはああああああっ!!!!」

 ドゴォーーーーーン!!!

「がはあっ!!」

 地面にクレーターが出来上がるほどの勢いで叩きつけられる。天高く撃ち上げた後に、一気に下界へと叩き落とされるかの様な凄まじい格闘スキル奥義。鎧はもう原型を留めていない。全身傷だらけで血塗れだ。だが執念で起き上がって来るナギストリア。そのタフさだけは称賛してやるよ。

「くっ、ならば…これを喰らうがいい……!」

 大剣を突きを放つ様に構えた。アリア達の三位一体に破られたあの技か? 

 チキッ! 

 再び右手の親指で剣の鍔を少しだけ持ち上げ、抜刀の姿勢を取る!

「アストラリア流抜刀術・奥義……」

ダークネス・スーパーノヴァ暗黒の超新星爆発!!!」

 やはりか、突き出した大剣から極黒のエネルギー砲が放たれて来る!

神龍しんりゅう!!」

 ドンッ!! カッ!!!

 そのエネルギーに向けて突進し、それを飲み込む程の巨大な斬撃痕を空間に刻む!!

 キィーン!! グゴオオオオオオ――――ッ!!!!!

 振り向き、納刀。その瞬間、刻んだ斬撃痕から吸い込まれたヤツの放った技、そして神龍の剣圧と魔力に神気の奔流が一気にナギストリアに向けて迸る!!

「うがあああああああっ!!!」

 渦に巻き込まれ、吹き飛ぶナギストリア。最早ボロボロだ。こいつには邪神パズズから奪った神格しかない。他の力を大幅に封じられた以上、神格の差では全ての神々から少しずつ、大半をアリアから分け与えられた俺に勝てるはずなどない。

 そして更に戦闘経験の差だ。俺もまだこの世界に戻って一ヶ月ほどだが、女神アリアとの稽古に邪神、魔人、神の試練に大魔強襲スタンピードと凄まじい激戦を、しかも短期間に経験してきたのだ。超成長の恩恵でそれは通常の人の何十倍、何百倍の経験値として俺の中に蓄積されている。コイツはここで必ず潰す。三人の堕天神の方がよっぽど厄介に違いないからな。なぜ人間のコイツなんかに忠誠を誓っているのかは謎だが……。

「ぐっ、ハァ、ハァ……、おのれ……、カーズ……!」

「もうお前に勝ち目はねえよ。立ってるのもやっとだろ? いつまでも過去に縛られた亡霊はここで消してやる。俺もお前の持っている記憶は一通り追体験したが、はっきり言って飽きた! 前に進むためにも、下らん過去などさっさと忘れるに限る!」

「なんだ…、と、貴様はあれだけの悲劇を、経験しておきながら、下らない、だと……!」

「ああ、下らねえよ。ただの胸糞悪い黒歴史と同じだ。そしてそこをずっとぐるぐると回ってるテメーも下らねえ。惰弱なのはテメーの方だろ。戻れニルヴァーナ、ソードフォーム」

 キィン!

 片手剣の形状になった神剣の柄を両手で掴み、頭上高く掲げる。さあ正義の女神の奥義による断罪の一撃を受けて貰うぜ。

 俺はほんの一月前は何の変哲もない、ただの病に苦しむ人間だった。有り体に言ってしまえば異世界転生ってやつだが、俺の物語は転生トラックや神の手違いで死んだとか、そんな単純なものじゃない。世界の因果や神々が関与した運命、一言じゃ言い表せないような複雑な事情が絡まり合って、俺は今この世界ニルヴァーナにいる。

 これはそんな俺、カーズが紡ぎ、歩み始めることになった数奇な物語だ。

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