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転移で降り立った場所は目的の街からまだ数㎞以上離れた草原。どういうことだ?
「おい、カーズ、なんかえらく離れた場所じゃないか?」
不思議そうな顔をして俺、カーズに尋ねてきたこいつはエリック。この世界ニルヴァーナで最初に仲良くなった冒険者の友人だ。
「変だな……」
「何が? 転移に失敗したの?」俺にそう訊いて来たハーフエルフの女性はユズリハ。エリックとは幼馴染で腐れ縁の冒険者だ。
「いや……、何かの干渉を受けたみたいだ。俺はギルド前に転移したはずなのに……」
無理矢理転移先を捻じ曲げられた様な、奇妙な感覚が残っている。どう考えても他者の介入があった。魔力の波長を変えられた様な感じだ。
「そのようですね……。それにもうそこまで来ているようです。姿を見せなさい!」
女神アリアが離れた空間に向けて叫ぶと、その虚空に黒い
「ククク……、さすがは腐っても神。よく気付いたものだ」
「テメーか、ナギストリア……。何の用だ?」傷は癒えているが、やはり封印術の影響で大幅に力は落ちているな……。コイツは俺の過去の数千年に及ぶ心の中に存在し続けていた闇の部分の様な存在だ。
「アレが、過去のカーズ?! ……確かに前の姿に似てなくもない、かもだけど……」
彼女、アヤは以前の俺を知っている。でもあんなに陰険な見た目じゃなかったけどな。
「過去のお姿も素敵ですが……。禍々しすぎますね、あのオーラは……。やっぱり今の美女の様な美しいお姿の方が、わたくしは素敵だと思います!」
俺が新名を与えたエルフのディードが口を開く。しかしこいつは何を言ってるんだろうか? そして俺の見た目には触れないで欲しい。
ヤツが既に背から抜いている黒い大剣も元通りに修復されているし、漆黒の甲冑も同様だ。どうせあの三神のやったことだろう。
「力の大半を大神に奪われたのだ。それを補うため、貴様の神格を奪いに来てやったのだ。カーズ、俺の半身よ。他の奴らに用などない」
コイツ……、マジで舐めてるんだな……。天界での俺は儀式で弱っていた。実力など全く発揮できなかったとはいえ、そこまで舐め腐ってわざわざ出て来るとは。だがこれはいいチャンスだ。コイツ一人にこんな芸当が出来る訳がない、手引きした連中が必ず何処か近くにいるはずだ。
「テメー、舐めてんじゃねえぞ!!」
「一人で来るとはいい度胸ね。アンタ達の下らないお遊びに付き合わされたお礼をしてやるわ!」エリックにユズリハはすぐに火が付くな……。だが危険だ。
「待て二人共、アイツは神気を操れる。悪いがこれは神格を持っていないお前達じゃどうしようもないんだ。アリア、みんなを神気結界で守ってくれ、こいつは俺がやる」
「そいつは、凄く嫌な感じがするの……。カーズ、気を付けて……」心配そうにアヤが伝えて来た。
「ああ、大丈夫だから。アリアの後ろにいてくれ。アリア、任せたからな!」
「危険です! 一人でいくなんて!」 「そろそろ弟を信じろよなー、まあ見てろって」 「はあ、仕方ないですね……、言い出したら聞きませんし……。多重神気結界!!! これで此方は大丈夫です。気を付けていくのですよ!」強靭な結界を幾重にも展開したアリアに手を振ってから、ナギストリアへと歩み寄る。
「俺の……、みんなが託してくれた大切な神格を奪う……? それで失った力を取り戻そうってか? ふざけるなよ、相当舐めてるんだな……!」
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心の奥底に眠る神格を解放、爆発させ、燃え上がった神気を全力で放つ。それと同時に体に装着される、銀に真紅のデザインが施された天上の神々が纏う神力の輝く鎧、
「アレが、神衣ってやつか…? とんでもない力を感じるぜ……」
「カーズ様が負けるなど、ありえません!」エリックとディードの声が聞こえる。ああ、絶対に負けねえよ。
「フッ、天界での貴様は儀式の影響でお荷物だったな。今なら全力を出せると言いたいようだが、後悔するがいい!」
「いつまでもあの時のままだと思うな。俺はお前をぶった斬るのに最早何の躊躇もない。来い、神剣ニルヴァーナ!」目の前に顕現される、輝く銀と真紅のオーラを纏う俺だけの神器。やはり凄まじい力を感じる。そしてその炎と冷気のリングに覆われた黄金の柄を左手でガシッと強く掴む。実戦では初めて使うというのに、これまでずっと使って来たかのように手に馴染む。さすがだよ、鍛冶の神ファーヌス。アンタの最高傑作、ありがたく使わせてもらうぜ!
「神器を手にしたところで貴様に何ができる、まずはこいつを受けろ!
ゴオオオゥッ!
天界で放った技か。奴を中心に黒い神気の衝撃波が放たれて来る。
「アストラリア流ソードスキル、クリムゾン・エッジ!」
ズヴァアン!!!
超高熱の刃で、目の前に迫り来るヤツが放った衝撃波を縦に地面ごと斬り裂き、破壊する!
「何ィ!?
ヤツに向け、加速スキルの
「アストラリア流など通用せんと言ったはずだ!!」
ズガガガシュッ!!! バキィン!!!
「
上下からの神狼の牙、同時二連撃を二発、4連斬。既存の二連撃しか防げなかったヤツの左の肩鎧を砕き、肉体に斬撃が入った。鮮血が飛び散り、ナギストリアが片膝を着く。
「お前は既存の基本技を知っているだけに過ぎん。何もわかっちゃいない。俺も以前はそうだったけどな。アリアが生み出した、神の流派がそんなに浅い訳がないだろうが。それにお前が知っていると勘違いしているのは俺が放ったことがある技のみ。俺は大剣スキルを使っていない。見て知っているのは|シューティング・スターズ《流星群》くらいだ。さあ、まだまだ続くぜ!!」
「くっ、小癪なっ!!」ドッ!! ズドドドドドシュッ!!!
「|ストーム・スラスト《嵐の突き》・
嵐の様な突きの6連打。数発は防御されたが、ヤツの甲冑を突き破り肉体へと刺突が突き刺さる! だが、まだこんなもんじゃ終わらないぜ!!
ズザンッ!!!! バキィイイイーン!!!
「ぐ、がはっ…、何だ…!? 今の連撃は……?」
「 こいつは俺のクソ親父の
「く…っ、いつの間にこんな力を……?!」
斬撃で体中は傷だらけ。鎧もまるで意味をなさない。それにヤツの大剣ではこの連撃スピードには対応出来はしない。
「テメーらが下らないことをやってる間に、こちとら神の試練に
ピキィイイン!!!
白く輝く鞘に、溜息が出るような美しい真紅の刀身が納められている刀へと変化した、俺の神器。手に取り前傾、利き手の左手を前に構え、抜刀術の体勢を取る。チキッ、右手の親指で剣の鍔を少しだけ持ち上げる。
「どうした? 抵抗しろよ、このままだと一方的だぜ」
「ぐ、おのれ……!」 「アストラリア流抜刀術」ズドドドドドンッ!!!
ヤツの体へと次々に突き刺さるような衝撃波が叩き込まれる!
「がふっ……!?」
「放った斬撃を更に神気と魔力で変化させ、銃の弾丸の様に相手に撃ち込む。俺のオリジナルだ。骨が砕けるほどの衝撃を撃ち込んだ。だがこいつはしぶとい、天界で目にしているからな。
「くそっ、ならば喰らえ! 黒の衝撃を!! ダーク・インパルス!!」
ドゴオオッ! パアーンッ!!!
ヤツの右掌から放たれた闇属性の衝撃・魔力撃を聖属性の魔力と神気を込めた左掌で叩き落す!
「な、あっ……?!」
「一度見たと言ったはずだ。対策してないとでも思ってるのか? 厨二野郎が。力が衰えているとはいえ、今迄の攻防でもう理解できた。お前は本来普通の人間。あの時は圧倒的な負の力でどうにかなっていたからわからなかったが……。お前と俺とじゃ戦闘経験の差が圧倒的に違うということがな。俺が神の試練でどんだけの数の魔物と闘ってきたと思ってるんだ? 神格が欲しいなら奪ってみせろよ。テメーはいつまでも過去の悲劇の主人公気取りのままなだけなんだよ!」 「ぐおおお!! おのれええええ!!!」怒りに任せ暗黒剣で斬りかかって来る。だが上からの斬撃か、体勢から見え見えだ。
ガイィィーン!!
右手の鞘に納刀したニルヴァーナで受ける。
「バカめ! 刀を抜かずに防ぐとはな!」
「バカはテメーだよ、アストラリア流格闘スキル・奥義!」ドゴオオオオオオオオオオオオオオンンッ!!!!
残った左手拳で、がら空きの胴体に風穴を空ける程の強烈なパワーを込めたアッパーカットで天高く撃ち上げる!!
「アルティメット・ヘヴン!」
「ぐはああああああっ!!!!」ドゴォーーーーーン!!!
「がはあっ!!」
地面にクレーターが出来上がるほどの勢いで叩きつけられる。天高く撃ち上げた後に、一気に下界へと叩き落とされるかの様な凄まじい格闘スキル奥義。鎧はもう原型を留めていない。全身傷だらけで血塗れだ。だが執念で起き上がって来るナギストリア。そのタフさだけは称賛してやるよ。
「くっ、ならば…これを喰らうがいい……!」
大剣を突きを放つ様に構えた。アリア達の三位一体に破られたあの技か?
チキッ!
再び右手の親指で剣の鍔を少しだけ持ち上げ、抜刀の姿勢を取る!
「アストラリア流抜刀術・奥義……」
「やはりか、突き出した大剣から極黒のエネルギー砲が放たれて来る!
「
ドンッ!! カッ!!!
そのエネルギーに向けて突進し、それを飲み込む程の巨大な斬撃痕を空間に刻む!!
キィーン!! グゴオオオオオオ――――ッ!!!!!
振り向き、納刀。その瞬間、刻んだ斬撃痕から吸い込まれたヤツの放った技、そして神龍の剣圧と魔力に神気の奔流が一気にナギストリアに向けて迸る!!
「うがあああああああっ!!!」
渦に巻き込まれ、吹き飛ぶナギストリア。最早ボロボロだ。こいつには邪神パズズから奪った神格しかない。他の力を大幅に封じられた以上、神格の差では全ての神々から少しずつ、大半をアリアから分け与えられた俺に勝てるはずなどない。
そして更に戦闘経験の差だ。俺もまだこの世界に戻って一ヶ月ほどだが、女神アリアとの稽古に邪神、魔人、神の試練に
「ぐっ、ハァ、ハァ……、おのれ……、カーズ……!」
「もうお前に勝ち目はねえよ。立ってるのもやっとだろ? いつまでも過去に縛られた亡霊はここで消してやる。俺もお前の持っている記憶は一通り追体験したが、はっきり言って飽きた! 前に進むためにも、下らん過去などさっさと忘れるに限る!」 「なんだ…、と、貴様はあれだけの悲劇を、経験しておきながら、下らない、だと……!」 「ああ、下らねえよ。ただの胸糞悪い黒歴史と同じだ。そしてそこをずっとぐるぐると回ってるテメーも下らねえ。惰弱なのはテメーの方だろ。戻れニルヴァーナ、ソードフォーム」キィン!
片手剣の形状になった神剣の柄を両手で掴み、頭上高く掲げる。さあ正義の女神の奥義による断罪の一撃を受けて貰うぜ。
俺はほんの一月前は何の変哲もない、ただの病に苦しむ人間だった。有り体に言ってしまえば異世界転生ってやつだが、俺の物語は転生トラックや神の手違いで死んだとか、そんな単純なものじゃない。世界の因果や神々が関与した運命、一言じゃ言い表せないような複雑な事情が絡まり合って、俺は今この
これはそんな俺、カーズが紡ぎ、歩み始めることになった数奇な物語だ。
(……大虐殺? 物騒だな、でも虐殺ってことはそれを行った奴らが居たってことだよな? 狂った奴らが核兵器みたいなもので世界が崩壊して人類が滅ぶくらいの爆撃とかしたのか?) 虐殺だから誰かが行ったというのが妥当だろう。自然破壊で滅ぶってのも、巨大隕石が落ちたってのもなんか違う気がする。【そうですね、人間を絶滅させるくらいの兵器とかはあったでしょう。それでも一人も残さず絶滅させるとなると、不可能ですね。シェルターのようなものに避難したり、運良く助かる者もいるでしょうから】 ダメだ、俺の頭じゃそんな芸当が出来そうな人間はいるわけがない、としか考えられない。ん、待てよ。確信がないがそれが出来そうな存在なら居るのは居る。でも……、まさかだけど。【カーズさんの推測は当たっていますよ。そんな芸当が出来るのは人間以上の存在】(ならやっぱり……)【……神です】(マジかよ……。何となく察しはついてたけど、神様直々に手を下すとか普通にない気がする。でも俺の勝手な見識だし、地球で神の存在なんて感じたこともないしな)【地球の神々は基本的に無干渉ですね。気が向いた時だけ歴史を修正する程度ですから、決して人前に姿を現しませんし、宗教なんて人間が勝手に創ったものですよ。中には人に紛れて遊んで暮らしてる神も居たりしますが。ですがこの世界ではもうすでに2回も神による大きな変革が行われています】(てことは2回もその大虐殺が行われたってことだよな? ……どうしてそんなことが?)【1度目は約1万年前。そのとき私はまだ生まれていませんでした。2度目は5000年ほど前で、それがニルヴァーナというこの世界の成り立ちです。でも人間たちはそのときの歴史に関することを知りません。そしてニルヴァーナという意味すら知らずにこの世界をそう呼んでいるに過ぎません。誰がそう名付けたのさえ知らないのです】(2回も世界を変革したのはなぜなんだ……? 人間は何をしたんだよ?!) 滅ぼされるなんてよっぽどだ。地球でも同じことが起こる可能性もあるけど、最早俺には関係のない話だ。地球なんざ1回滅んだ方がいいと思う。アリアはふう、と溜め息を漏らしながら、また話し続ける。神様が溜め息を吐くほどのことなんだろうか?【1度目は今の地球と酷似していると言った方が分かり易いですね。人間は互いに互いの利益の為に争いを続けました。
魔物の群れに向けて魔法を放つ、サンダー・ジャベリン。文字通り雷の槍だ。スキル弱点看破で目に映るのは相手の眉間だ。そこに標的化して狙いを定めて魔法をコントロールする。もう敵の数に合わせて発動できるくらいにはなった。超成長の恩恵だね。 ズドン! バチバチッ! バリバリバリィ!! 眉間を射抜かれながら追撃で電流が敵の全身を駆け巡る。今相手にしているのはビッグ・ボア、所謂でっかい猪だ。食べると美味いらしい。10頭程の群れだが、3頭急所を外してしまったのでまだまだコントロールが足りないな。仕方ない、残りは武器で対応しよう、鞘から抜き取ったのは女神刀。さすがに和名の日本刀には横文字は使わなかったみたいだ(笑) アリアさん、分かってらっしゃる。 まだ『抜刀術』は難しい、鞘の中で摩擦を起こし剣閃スピードを上昇させるということだが、刀剣を鞘から抜き放ち、さらに納刀に至るまでをも含めた動作が、高度な技術を有する武芸として成立しているくらいだ、一朝一夕で出来るものではない、普通に振り回すのがまだ精一杯だ。 残りの猪に向かって加速する。丁度3頭魔法で痺れて眼前に並んでくれている、「アストラリア流刀スキル」 弱点の眉間に向けてほぼ同時に瞬速の3連撃を1頭に1撃ずつ放つ、虎のツメの如き三連撃。「虎爪閃!」 ザザシュッ! ザヴァァーン!!! 全て的確にヒットした。断末魔とともに巨体が崩れ落ちる。<レベルアップしました、スキルの更新を行います> お、レベルも上がったな。「ふう、結構頑張ったな、ちょっと休憩しよう」 自身に新しく習得した気配遮断と物理結界に魔法結界を張る。俺の存在が認識されにくくなる。透明人間みたいなもんだ。とりあえず狩ったビッグ・ボアを片っ端から異次元収納庫に突っ込む。アリア曰く、【狩った魔物は体の部分が素材になったり、食材になったりしますからー、街のギルドで売って路銀に代えましょう。その時についでに冒険者登録をしておくといいでしょうねー】 ということらしい。なので最初に倒したクマさんから全部そこに突っ込んである。ちなみにこの中に入れている間は時間の制限がないらしい。新鮮なままお届け可能なのだ。クール便のようなものだということにした。そしてどのくらいものが入るのか聞くと、
さて、流れ的にバトルする羽目になってしまった。でもね、ぶっちゃけ俺結構ビビりだよ、他人にはバレないように強がってきたけどね。前世でもなるべく諍いは避けてきたしなあ。 でも売られたら買ってしまうスタンスだったし、根本的には短気なんだよ。喧嘩くらいは学生時分まではよくしてたから。相手がこっちよりビビってたら怖くないんだよね。もうそういうときってアドレナリン出まくってるし、スポーツでもゴール近辺だと気持ちが昂って仕方なかった。まあ冷静じゃないよね、本能のままにぶっぱするみたいなもんだし。 でもどれも対人間。魔物とか、RPGの中でしか戦ったことないから。子どものときに近所の狂暴な犬と死闘を繰り広げたくらいなだけだ。 冷静に考えて、平和な世界に生きてきた人間がそんなの相手に戦えるかい? 野生動物とか、家畜の牛やら馬、多分羊にも負けると思うよ、だって角生えてるし。早速ビビりが発動しながらアリアに尋ねる。(モンスター? 魔物? ってそんなのどこにいるのさ? 結構長話ししてたと思うんだけど、それらしきものは全く見なかったぞ。森の中だってのに)【えーと、それはですねー私が結界を張ってたんですよー。目覚めた瞬間に襲われるとか嫌じゃないですかー。カーズさんぐっすり眠ってましたし。それに私と話す時間も必要でしたしねー】 けらけらと笑いながら話すアリア。なるほど、結界ときたか、サラッとすごいこと言ったな。もうずっと張っておいて欲しい。(ほほうー、ならそれを解除したら?)【普通にこちらの存在が周囲に認識されますねー。魔物の方が人間よりも感覚器官が優れていますから。攻撃的な魔物だとすぐやって来るでしょうねー(笑)】(何それ、怖い。ごめん、胃が痛い気がする。持病の仮病が発病したみたいだわ)【気のせいです。しかも自分で仮病って言っちゃってますよー。小粋なトークで誤魔化さないでく下さーい。そんな小ネタ言える余裕があるなら大丈夫ですよー。この辺りの敵はぶっちゃけ弱いですから。スタート地点にここを選んだのも、しっかりと経験を積むためって理由がありますからねー。さあさあ、起きて準備して、結界を解きますよー】 止める間もなくアリアが結界を解く。パリーン、と何か薄いものが割れるような感覚がした。結界解除の音だろう。うーむ、弱い敵ねー。古代竜や
(アリア、どの装備もSランクなんだけど……。しかも補正値えげつないし。どんなもので出来てんの? とりあえずこのバトルドレス。ドレスって、俺男だよ) トンデモ素材が使われているのは間違いないだろう。でもそこはちゃんと把握しないといけない。先ずはこの服の見た目だ。黒のロングコートにもワンピースのようにも見えるが腰から上は体にフィットした服になっている。大きな襟が左右に2枚ずつ胸の下あたりで止めてある。インナーに白と黒のシャツの様なものがあり、首の半ばまでの長さだ。左右の肩にはショルダーガード、肩から下はまるでメイド服。肩回りが膨らんだデザインに、袖は長く肘の辺りからフレアーなデザインで袖先にはレースのフリルがご丁寧に付いている。それは腰から下の部分のコートのようなスカートみたいな部分も同じで裾にはこう、メイドさんのひらひらでギザギザなフリルだ。 どう形容したらいいのか、ぶっちゃけ俺のファッションに関する語彙力では無理だなあ。腰から下の前方は開いており、身に着けているのはズボンだ、良かった。腰から下のコート部分にはこれまたショルダーガードの素材と同じようなプレートがこう、鱗のように重ねて装着してあり、防御力も高そうだ、イメージ的にステイナイトな剣使いぽい。そして膝下くらいの茶色のブーツ、踵部分に羽がデザインしてある。これはぶっちゃけカッコイイ。 全体的に黒を基調としているが、縁取りは赤、レース部分は白だ。胸の上部には硬い金色のプレートが付いている。そして手には指先だけ出ているグローブ。ナックルの部分に超硬い金属のようなものが付けられている、これで殴られたら痛いだろう。見たらわかる、絶対死ぬやつやん普通に。でもね、なんと言っても軽い。凄く伸縮して動き易そうなのだ。【まあ結構中性的なデザインで作りましたしねー。レースやフリルは私の趣味でーす! もしMPが枯渇しかけたら女性側に肉体が引っ張られてしまいますからー、そんなときでも違和感なく着られますよー!】 言い切りやがったよ……、ものすげー潔いな……。(やっぱ自分の趣味じゃないか。でもそこまで自信満々で言われちゃあ、いっそ清々しいよ。で、何で出来てるの? てかどうしても女にさせたいのかよ?)【ふふーん、地上で最も硬いと言われるような鉱石素材、オリハルコンやアダマンタイト、ガマニオンに|星
【それでは『ステータス・オープン』と声に出すか、心の中で念じてみて下さい】 周囲には誰もいないので、アリアに言われた通り口にしてみる。するとゲームのステータス画面のようなものが表示される。★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★<カーズ(・ロットカラー)∞歳(18~20歳相当)男 魔法剣士>称号 :女神の戦士Lv :1 (+50/装備補正)HP :1200(+500/装備補正)MP :2400(+500/装備補正)筋力 :100 (+250/装備補正)敏捷 :150 (+150/装備補正)魔力 :1200(+350/装備補正)物理耐性:150 (+2650/装備補正)魔法耐性:150 (+2650/装備補正)幸運値 :50 (+100/装備補正)<装備><アストラリアソード(S:カーズ専用)>物理攻撃力:1250魔法攻撃力:∞(込めた魔力量により最大値増加)<女神刀(S:カーズ専用)>物理攻撃力:1250魔法攻撃力:∞(込めた魔力量により最大値増加)<アストラリアナイフ(S:カーズ専用)>物理攻撃力:1250魔法攻撃力:∞(込めた魔力量により最大値増加)<バトルドレス(S:カーズ専用)>物理耐性:1200魔法耐性:1200(込めた魔力量により最大値増加)付与効果:自動回復(S:100/秒でHP・MPを回復する) :状態異常耐性(S) :魔力ヴェール(S:物理/魔法防護膜を自動展開/ 込めた魔力量で範囲/効果上昇) :HP+500 :MP+500 :筋力+150 :敏捷+150 :魔力+150 :物理耐性+150 :魔法耐性+150<ドラゴングローブ(S:カーズ専用)>物理攻撃力:1250魔法攻撃力:∞(込めた魔力量により最大値増加)物理耐性:550魔法耐性:550付与効果:衝撃追加(S:竜の息吹 :込めた魔力属性のブレスが発動)<ペガサスブーツ(S:カーズ専用)>物理耐性:350魔法耐性:350付与効果:飛翔(魔力を込めると発動)<グリ
目が覚める。大の字に寝ていたようだ。見たことのない木々の間から真っ青な空が見える。森かな? マジかよ……どうやら本当に転生したみたいだ。大きく深呼吸をすると、田舎に帰ったときよりも美味しい空気だった。都会の喧騒で汚染されたものと違い、沁みわたるような感覚を覚えた。とりあえず起きよう、上半身を起こしたとき頭の中で声が響く。【あっ、おはようございますー。私でーす、私ー】 ん? このはっちゃけたときの井上麻里奈さんみたいな声は……、どうやら女神アストラリアの様だな。(えーと、私私詐欺ですか?) 心が軽く体も力が漲るようで、憑き物がおちたように思考もクリアだ。【切れっ切れの返しですねー。そうです私ですよー、あなたの素敵な女神アストラリアですー。色々と設定し忘れたことがあるので、これから決めていきましょう。それと冒険や戦闘の指南です。所謂チュートリアルってやつですねー】 なんか抜けてる女神様だな。でもとっつきやすくて気安い感じだ。(何でしょうか? 決めてないこと?) うーん、と頭を捻る。【ほらー、まずは名前ですよー名前! 日本人ネームのままだとここでは違和感があるでしょうから、現在の名前から多少いじって作りましょう】 そういうもんか。ナギトでもいいけどそのまんまだしなあ。違和感ないとは言い切れないし、新しい人生だ。この際変えるのもアリだな。(じゃあ、和士の和のところを別読みで、カズ、ファンタジーぽいなら『カーズ』でいいですか?) ぶっちゃけ名前とかどうでもいいんだが、折角だしな。乗っておこう。ゲームでもたまに使う名前だし。因みによく間違われるが、呪いはカース、curseだ。(名字はどうしましょうか? アストラリア様、センスのある変換お願いします) 丸投げでも女神様のがセンスは良いだろう。ぶっちゃけそういうのめんどくさいんだよね。【あらー、いいんですかー? では一色をもじって……今のカーズさんはご希望通り赤髪に毛先に金のメッシュが入ったような色合いですから、まあ赤色ってことで『ロットカラー』なんてどうでしょうかー?】 流石の女神様。カッコイイ。ロットとかロッソってラテン語で赤だよな。てかそんな色になってるんだな。長めの前髪を引っ張って見てみる。うん、近すぎてよくわからんな。(カーズ・ロットカラーか、いいですね! もうそれでOKで